映画のあとにも人生はつづく

最近見て心に残った映画について書いています

友罪

ある町工場に、二人の若者が新入りとして入ってくる。元週刊誌記者の益田と、工場を転々としているらしい鈴木。二人は、会社の寮となっている一軒家に先輩社員と暮らし始める。益田は先輩たちともそつなく付き合うが、鈴木は愛想が悪い。部屋がとなり同士の…

フロリダ・プロジェクト

アメリカ、オーランド。夏休みの子どもたち。新しい車がやってくると、6歳の女の子ムーニーは、友だちとモーテル2階の廊下から唾を飛ばしっこする。車のフロントはベタベタ。やがて持ち主の中年女性が、ムーニーのいる部屋に怒鳴り込んでくる。 「今度は何…

オー・ルーシー!

混みあった駅のホーム。さえない年配のOLが所在無げに電車を待っている。うしろから若い男性が何かを耳打ちすると、ホームに入ってくる電車に飛び込む。呆然とする女性、節子。出勤すれば自分よりさらに年配の女性が、興味深げに聞いてくる。しかし日常は変…

タクシー運転手

1980年5月、ソウル。タクシー運転手のキム・マンソプは、学生たちがデモを行い道がふさがれることに苛立つ。客は今にも生まれそうな妊婦で病院へ急いでいるのだ。なぜデモなんかするのか。 「デモをするために大学に入ったんじゃないだろうに」 家に帰ると小…

ニッポン国VS泉南石綿村

2015年4月、大阪府泉南市で「泉南石綿の碑」の除幕式が行われている。この地域は明治の終わりから100年にわたって石綿紡織業が地場産業だったという。 資料写真を背景に監督の原一男がナレーションで説明している。石綿は耐火性や耐久性に優れ安価で生産され…

ラッキー

赤茶けた土地に灌木が茂り、サボテンが立ち並ぶ。そこに大きなリクガメがゆっくりと横切ってゆく。アメリカ南西部。90歳でひとり暮らしの男の一日がまた始まる。ゆっくりとしたウォーミングアップを行い、冷蔵庫に冷やしたグラスのミルクを飲み干す。そして…

あなたの旅立ち、綴ります

人のやることが気に食わない。家政婦がいても、庭師がいても、文句をつけては全部自分でやってしまう。お屋敷の中、夜になると孤独になる。眠れないので薬を飲む。多めに飲んでも死なずにまた病院から戻ってくる。81歳。広告業界で成功した女性、ハリエット…

15時17分、パリ行き

人混みの中、リュックを担いでキャリーバックを引きずる男。その背中をカメラは追いかける。顔は判然としない。ひげ面。そしてサングラス。やがてここが列車の駅だと分かる。男が乗り込もうとするのはアムステルダムを15時17分に出発したパリ行きの列車だ。 …

願いと揺らぎ

観音像のように見える枯れ木が一本、海沿いの集落に立ちすくんでいる。その集落は津波に洗われ、ほとんどが流されてしまった。ひとりの老婆が何もかもなくなった場所で、かつてあった自宅を案内する 「あそこがお勝手口、…ここが玄関か…」 宮城県南三陸町、…

ロープ 戦場の生命線

前方にほのかな明かりが見える。手前に何か羽根のようなものがゆっくりと回転している。暗い井戸の中から外を見上げた映像だ。やがて回転するものが人間だと分かる。井戸に落ちた人間をロープで引き上げているのだ。しかし水を含んだ死体は重く、ロープが切…

スリー・ビルボード

アメリカ・ミズーリ州。さびれた道路に朽ちかけた3枚の広告看板が並ぶ。写真も剥がれ落ち、そこに何も読み取ることは出来ない。「あんな道は迷ったやつか、ぼんくらしか通らない」という道路で、今や広告を出す人間など誰もいない。ミルドレッドはこの3枚の…

デトロイト

1967年、アメリカミシガン州デトロイト。無許可で営業する黒人の酒場が摘発された。客と従業員を次々に車に乗せる白人の警察。やがて近隣の黒人たちが周りを取り囲みはじめる。最後の車が行ってしまうと、黒人たちはやりきれない怒りに任せて周囲の店を襲う…

はじめてのおもてなし

ドイツ、ミュンヘン。ひとりの難民の青年が美容院で髪の毛を切っている。仲間から、その髪型だとドイツ人に嫌われるとアドバイスを受けたのだ。ナイジェリアから逃がれて来たディアロは、難民センターで暮らしながら、難民の認定を待っている。 と、ここで画…

ラサへの歩き方 祈りの2400km

五体投地という言葉に惹かれて映画を見た。―中国チベット自治区の東、マルカム県プラ村。薪をストーブにくべると子どもたちが目を覚ます。標高4000mの高地で人々はヤクを放牧し、薪を集めるために森に入る。父親を亡くしたばかりのニマは、父親の弟ヤンペル…

ルージュの手紙

女性のいきむ声。助産婦の励ます声。生まれたばかりの赤ちゃんを取り出し、白く濡れた小さな体を母親の手のひらに渡す。赤ちゃんのかすかな泣き声。母親の静かなほほ笑み。人が誕生するために発するいくつもの声が生の温かみを伝える。 フランスのとある田舎…

否定と肯定

1994年、アメリカジョージア州。「ホロコーストの真実」を書いた歴史学者デボラ・E・リップシュタットの講演が行われている。そこに乗り込んできたのが、ホロコースト否定論者のデヴィッド・アーヴィングだ。本の副題からして乗り込んできそうだ。「大量虐殺…

希望のかなた

フィンランドの港町。岸壁に打ち付けるたぷたぷという音が、潮のにおいを感じさせる。運ばれてくるのは石炭。真っ黒な石炭の中からひょいと、大きな目をした男が顔を出す。男は町でシャワーを浴び、警察署に出向く。難民申請するためだ。 この男カーリドはシ…

ギフテッド

フロリダ。小学校1年のクラス。3+3なんてばかばかしい。6に決まってる、と偉そうに言う少女。カチンときた先生は次々に問題を出すが、少女は3ケタの掛け算まですべて答えてしまう。 「天才じゃないか?」 驚いた先生は、保護者のフランクに「この子には…

我は神なり

韓国の片田舎。やがてダムができて村は水没する運命にある。そんな村に、嫌われ者のキム・インチョルが数年ぶりに帰って来る。賭場や酒場、行く先々で面倒を起こす。高校生の娘が大学の学費にと貯めていた貯金にも手を付ける。ある時、飲み屋で喧嘩し殴られ…

We Love Television?

深夜の住宅街。車の中である男の帰宅を待つ。帰ってきたのは欽ちゃん、萩本欽一だ。待っていた金髪の中年男は「大将!」と声をかける。驚いて振り向く欽ちゃん。 「もう一回視聴率30%の番組を作りましょう!」 というと、 「うわぁ、こんなにうれしい話をす…

サーミの血

妹の葬儀に出席を拒む老婆。息子に促されてしぶしぶ出かけるが、故郷に宿泊することはかたくなに拒む。老婆の名前はクリスティーナ。しかし、本名ではない。名前を捨て、故郷を捨てたのだ。老婆は、窓越しに見えるなだらかな丘陵を見つめながら過去を回想す…

ポルト

ポルトガルの港町、ポルト。その日暮らしの青年ジェイクは、アルバイト先の発掘現場で、ひとりの女性とまなざしを交わす。考古学を学ぶ留学生の女性マティだ。その後不思議なことに、帰りの駅のホームで、入ったカフェで、ふたりはお互いを見出すことになる…

わたしたち

ドッチボールのチームを分けるためにじゃんけんをする。勝った方が味方を選ぶ。カメラはある一人の女の子の表情をとらえ続ける。いつ自分の名前が呼ばれるか、不安な面持ちだ。呼ばれないと参加もできない。じゃんけんの声と他の子の名前が次々に聞こえる。…

三度目の殺人

暗い川の岸辺にふらふらと歩く男。うしろから歩く男が不意にスパナを振り下ろす。顔にわずかな返り血を浴びた男は横たわった死体に火をつける。見下ろす顔が炎の照り返しに明るんで見える。今男は殺人を犯したのだ、とそう見える。普通に考えれば。 男は三隅…

ダンケルク

1940年5月、フランス北部の港町ダンケルク。英軍の兵士が町中をさまよううち、空からビラが降って来る。ダンケルクを包囲したというドイツ軍のビラだ。直後に銃撃。逃げ惑う兵士が海岸に出ると、数千もの連合軍兵士が砂浜を埋めていた。追い詰められた敗残兵…

幼な子われらに生まれ

モザイクに色分けされた画面。その上を、人の足が踏みつけてゆく。色分けされた地面は遊園地の入り口だ。父と娘が手をつなぎ入ってゆく。楽しげに遊ぶ二人。よくあるシチュエーションなので、離婚した父親が、別に暮らす娘と定期的に会う日だと分かる。それ…

ギフト 僕がきみに残せるもの

カメラに向かって語りかける男。背後にベビーベッドが見える。 「6週間後 あのベッドに きみがやって来る このビデオを撮るのは僕がどんな人間か きみ分かってもらうため できるうちに たくさん僕の姿を残しておくためだ」 男は元アメリカンフットボールのス…

静かなる情熱 エミリ・ディキンスン

19世紀半ばのアメリカ。マサチューセッツ州の女子学校で、信仰を強要する教えに反発し、自らの心にのみ神を問う少女がいた。エミリ・ディキンスン。のちに現代アメリカを代表する詩人となる。 このひとは詩人だった ごく普通の意味から 驚くべき感情を蒸留し…

彼女の人生は間違いじゃない

薄もやの桜並木の向こうからヘッドランプが近づいてくる。やがて車が現れると、防護服に身を包んだ人たちが降りてくる。原発関係の作業員のようだ。そこでカットが切り替わる。どこかの町の空撮。小さな部屋で目覚める女性。冷蔵庫から水を飲むと、炊けたば…

裁き

インド、ムンバイ。小さな部屋で子どもたちに地理を教えている白鬚の男。ナーラーヤン・カンブレ、65歳。時間が来ると町を横切って、イベント会場に向かう。そこではみなが待ちかねたように迎え、カンブレはステージに立って歌う。社会問題を訴える歌だ。と…