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映画のあとにも人生はつづく

最近見て心に残った映画について書いています

杉原千畝

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昭和30年。日本の外務省に一人の外国人が訪ねてくる。「スギハラセンポ」という役人がいるはずだ、と。応対した役人はなぜか「そんな人間はいない」という。外国人は粘る。「多くの人間が彼に命を救われたのだ」と。映画はここから時間をさかのぼり、リトアニアの領事代理として多くのユダヤ人の命を救った杉原千畝の半生を描いてゆく。

 

スピルバーグが描いたドイツ人の実業家、オスカー・シンドラーは1000人以上のユダヤ人の収容所送りを阻止した。その功績になぞらえて、杉原千畝は日本のシンドラーとも呼ばれる。杉原は当時難民化したユダヤ人たちに、2千通余りに及ぶ日本通過のビザを発給し続けたからだ。しかもそれは政府の意に反して行われた。杉原はなぜこのようなことを行ったのか。映画は彼の外交官人生を紐解くことで、答えを見つけ出そうとしている。                                                                         f:id:mikanpro:20160105230531j:plain

監督はチェリン・グラック。日本で生まれ育ったアメリカ人でユダヤ人の血を継いでいる、という。あるインタビューで彼はこう語っている。

 

No man is an island(人は一人では生きていけない)』という言葉がありますが、人間は人生の道を歩んでいく中でいろいろな人と触れ合い、影響されている。杉原さんもそうだと思いますが、誰もが偉大なことをやると最初から思っているわけではないと思うんです。無意味か偉大かは関係なく、自分ができる限りのことを尽くしたと言える人になってもらいたい。

 

杉原が行ったことがとりわけ特異なものに見えるのは、「役人」という職業からくるイメージとのギャップもあると思う。役人は決して上の命令に逆らわないものだ、というのが一般のイメージだからだ。実際そのような人間が役人になるし、そのような人間になるべく、受験勉強時代から仕事に就いた後も訓練を積む。杉原は、その意味に限ってはおそらく優秀な役人ではなかったのではないかと推測する。しかしそういう人間でないと、やはり出来ないことに違いない。

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リトアニア領事代理からドイツに移った杉原は、ドイツがソ連に侵攻することを看破し、命がけで証拠を集めて報告するが、無視されてしまう。上に立つ人間は自分が欲しい情報しか耳に入れない。やがてベルリンの町が空襲にさらされると、ベルリンの日本大使に杉原は言うのだ。

 

「国力のない国がむやみに跳ね上がって拡大しようとするとどうなるのか、日本政府に教えてあげればいいのです。」

 

杉原はやがてルーマニアに行き、そこで何もするなと命じられる。舞踏会に赴き、夫婦で踊る俯瞰の映像に、太平洋戦争の泥沼にはまり込んでゆく日本の映像が重ねられる。こんなにも無力な一個人が、あれだけのことをなし得たのだ。そのことにいくばくかの勇気をもらえる映画である。

 

監督チェリン・グラック

主演:唐沢寿明小雪小日向文世

2015 / 139

 

公式サイト

http://www.sugihara-chiune.jp/