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映画のあとにも人生はつづく

最近見て心に残った映画について書いています

マネーショート 華麗なる大逆転

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世界金融危機を引き起こした2008年のリーマンショック。実はその裏で、危機を見越して大もうけをした人たちがいた・・・。映画は4人の人たちにスポットをあてそれぞれの人生模様を描いてゆく。当時の実写をスタイリッシュに織り込み、ユニークな演出で難しい金融用語をわかりやすく解説するなど、単なるドラマではない作品に仕上がっている。

 

それにしても取引の額が桁外れで、とてもついて行けない。例えば4人のうちのひとり、マイケル・バーリが投資したのは13億ドル(約1560億円)で、最終的にその倍額が手に入ったらしい。何じゃそれ?という感じ。それが全部自分のものではないだろうが、それにしてもね。最近大リーガーの年俸をみてもいったい何に使うのかと思うが、お金持ちはお金持ちの世界で超インフレなのだろうか。預かりしれませんな。

 

監督・脚本はアダム・マッケイ。コメディ映画やTV番組を作ってきた人だが、原作を読んで魅了され自ら名乗りをあげたという。この作品は単純に裏でボロもうけをした話ではなく、金融界の人たちが根から腐りきっていて、出し抜こうにも理屈通りにいかないというエピソードを盛り込んでいる。

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「初めは僕らのヒーローみたいな感じなんだけど、そのうち、とことん腐りきった金融システムにやられちゃって、しまいにはヒーローじゃなくなるんです。僕は“嘘くさい正義の味方”みたいなものが登場する映画が、あまり好きじゃなくてね。現実の世界はそういう風にはなってないじゃないですか。コメディをやる時も僕はできるだけ、主人公をいじって、100%の英雄にはならないようにしてるんです。」

 

だから「華麗なる大逆転」という副題だが、観終わった感じは爽快ではない。鬱々した感じが残る。しかこれもある意味当然ではある。なぜならいくらウォール街や銀行がひどいことをしていると嘆いて見せても、彼らはそのことに対して闘っている訳ではない。そのひどいやり方が破綻すると知って破滅の方にお金をかける、ただのギャンブラーだからだ。ブラッド・ピット演じるベン・リカートがいみじくも言う。「はしゃぐな」と。自分たちが成功すると言うことは何万人もの失業者が出て、年金や社会保障のお金が消えることなんだと。

彼らは大金を手に入れたが、それによって何かを変えたわけではない。監督も語っている。

 

「そもそも殆どの人は、何が起きたのか、いまだにわかってないと思いますよ。そして同じような問題が、いまだに金融システムの中枢に巣くっている。ただ、僕は専門家でも何でもないけど、これだけは言えますよ。いまだに金融機関は大きすぎてつぶせません。あの2008年を経験してもなお、どこの銀行もますます膨れあがってる。おかしいでしょ?この事実だけは、何度でも伝え続けていくべきです。」

 

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これに限らず、社会の悲惨な体験というのは、なぜうまく継承されないのか。失敗を繰り返すのは後世の人間など、別の人間だ。人の痛みはうまく想像できないという、人間の根本的な欠陥がこのことを邪魔しているのだ。しかし、その欠陥は同時に、人間が平穏に生きるのに必要な能力でもあるのだが。

 

監督・脚本:アダム・マッケイ

主演:クリスチャン・ベール、スティーブ・カレル、ライアン・ゴズリングブラッド・ピット

原題「THE BIG SHORT」

原作:マイケル・ルイス「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」(文春文庫)

アメリカ映画 2015 / 130

 

公式サイト

http://www.moneyshort.jp/