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映画のあとにも人生はつづく

最近見て心に残った映画について書いています

スポットライト 世紀のスクープ

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アメリカ、ボストン。地元の名門新聞「ボストン・グローブ」に新しい編集局長がやってくる。それが物語の始まりである。彼は着任早々、神父が児童に性的虐待を加えていた事件を調べるように命ずる。30年の間に80人もの児童に手を出したケーガン神父の事件だ。事実の深刻さに比べて、この事件の取り扱いがこれまで少なすぎるというのだ。調べてゆくうち事態は予想を超えた広がりを見せてゆく…。

 

監督・脚本はトム・マッカーシー。 

「この作品で教会をバッシングするつもりはない。これは『なぜこのようなことが起きてしまったのか』という問いかけだ。子どもへの虐待だけでなく、その虐待を隠ぺいしようとした組織ぐるみの悪しき行いが教会内にあった。そしていまだに行われているところもあるかもしれない。なぜ誰も声を上げずに、この虐待が何十年も横行することを許してしまったのだろうか。」                        

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教会という権威への挑戦と、周囲の無理解をものともせず続けられた粘り強い取材…。この映画は記者たちの調査報道の輝かしい実績として語られている。しかし、むしろ印象に残ったのは、数年前に同じ情報を提供されたとき、その重要性に気付かず小さな記事で済ませたという事実だ。それは勇気がなかった、ということとは少し違う気がする。

徹底した取材を命じた編集局長は言う。

 

「我々が歩んでいるのは暗闇の中だ。光が当たらないと、そこが間違った道なのかどうかが分からない。」

 

私たちが見る世界はいくつものフィルターがかかっていて、見えているのに見ていないことって結構あるのだろう。そして自分の見ている世界、感じている世界が唯一と思ってしまっているのだ。神父が何か悪いことをしている。しかしそれほどひどいことではあるまい。だって神父なのだから、と。しかしフィルターを一つ外すだけで、別の世界が姿を現す。壁の反対側に一面に白アリがこびりついているようなものだ。

 

そして壁を崩してもまたその奥に、また崩してもその奥に。白アリは消えてくれない。ボストン・グローブ紙は2002年、600本の記事を書いた。記事が出た後全世界で報告された神父によるレイプは4000件に及んだという。

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日常の習慣、惰性、権威へのおもねり…、様々なフィルターを取り払って、壁の向こう側の小さな音に耳を澄ますこと。それはとても困難なことに違いない。だから、その道を歩むことの出来た人には栄光がある。この記者たちのように。しかしそこに栄光があるということそれ自体が、逆に人間社会の生きづらさを明かしてもいるのだ。

 

監督:トム・マッカーシー

脚本:ジョシュ・シンガー、トム・マッカーシー

主演:マーク・ラファロマイケル・キートンレイチェル・マクアダムス

アメリカ映画 2015 / 128分

 

公式サイト

http://spotlight-scoop.com/