映画のあとにも人生はつづく

最近見て心に残った映画について書いています

あなたの旅立ち、綴ります

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人のやることが気に食わない。家政婦がいても、庭師がいても、文句をつけては全部自分でやってしまう。お屋敷の中、夜になると孤独になる。眠れないので薬を飲む。多めに飲んでも死なずにまた病院から戻ってくる。81歳。広告業界で成功した女性、ハリエット・ローラーだ。

 

ある日、新聞の死亡記事が目に留まる。もし自分が死んだらどんな風に書かれるのか。これは他人に任せてはいられない。俄然やる気が出てきた。かつて広告を出していた新聞社を訪れ、ライターのアンに自分の訃報記事を書くように命じる。

 

ところがアンが書いてきた記事はひどいものだった。それもそのはず、彼女を知っている人で彼女をよく言う人は誰もいなかったのだ。アンは言い放つ。問題は私の才能じゃない、あなたよ、と。ここから、自分の死亡記事を完璧なものにするためのハリエットの苦闘が始まる…。

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監督はマーク・ぺリントン。ミュージックビデオの監督としても知られているという。

「彼女の人生は一見問題がないように見える。でも実際は空っぽなんだ。外見と内面がぶつかり合っている。この映画のなかで、彼女は意義深い人生とは何なのかを定義づけなければならない。」

 

人は人生の後半に自分を変えることができるのか、その興味で映画をみた。ハリエットによると、追悼記事に必要な要素は4つあるという。

 

①家族や友人に愛されたこと
②同僚から尊敬されたこと
③誰かの人生に影響を与えたこと
④見出しになるような特別な何か

 

①と②は事実でないなら難しい。そこで③と④を実現するために、ハリエットは地域のコミュニティセンターを訪れ、問題を抱える子どもたちに影響を与えようと画策するのだが…。

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アンは当初いやいや取材を続けていたが、次第にハリエットの奔放さと辿ってきた人生にひかれ始める。アンには実はエッセイストになりたいという夢があったのに勇気を持てずにいるのだ。

 

映画を見てみると、ハリエットは本質的なところは何も変わっていない。どちらかというと隠されていたハリエットが発見されたのだ。人は若い時に必要とするものと、年老いて必要とするものが違うのではないかと思う。若い時のままのやり方では、年老いて必要なものが手に入らないのだ。ハリエットはアンとの交流の中でようやくそのことに気づく。しかし気づいた時には、自らの死期が近づいていた。

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ハリエットがこの映画の中で繰り返し語ることがある。

 

リスクを背負って冒険してこそ生きる意味がある

 

というものだ。彼女の行動と語る言葉は、ハリエットが意図した以上にアンの人生に影響を与える。その影響こそがハリエットの人生だと、監督は言う。

 

「周囲の人にどのような影響を与えているかを見るまでは、その人のことってわからないもんなんだよ。」

 

監督・製作:マーク・ペリントン
主演:シャーリー・マクレーンアマンダ・セイフライド
アメリカ  2016 / 108分

 

公式サイト

http://tsuzurimasu.jp/