映画のあとにも人生はつづく

最近見て心に残った映画について書いています

ジョジョ・ラビット

f:id:mikanpro:20200216182701j:plain


鏡の前で10歳の少年が、自分自身に向かってつぶやく。

 

ジョジョ、10歳。今日からお前は男になる」

 

第2次大戦下のドイツ。ジョジョはこの日からヒトラーユーゲントの合宿に参加する。ところが、運動音痴で内気なジョジョは失敗続き。ウサギを殺せと言われ、怖くてできなかったことから「ジョジョ・ラビット」というあだ名までもらう始末。

 

そんなジョジョを励ますのは、ジョジョの妄想が作り上げたヒトラーおじさんだ。ジョジョは当時のドイツ人のご多分に漏れず、ナチスを信奉してしまっているのだ。

 

ある日、自宅で起きた物音を辿ったジョジョは、壁の裏にユダヤ人の少女が隠れ住んでいることを発見する。仰天するジョジョだが、

 

「通報したらあんたもお母さんも死刑よ」

 

と脅され、ユダヤ人のことを教えてもらうことを条件に、壁裏に住むことを認めることに。こうして大戦末期のドイツで、ヒトラーユーゲントの少年とユダヤ人少女との、奇妙な日々が始まる…。
              

                    f:id:mikanpro:20200216182722j:plain

 監督は想像のヒトラーおじさんを演じている、ニュージーランド出身のタイカ・ワイティティ

 

ナチス主義は子どもの純粋さを剥奪した。単に子どもでいることができる、という子どもの才能が奪われてしまった。親に歯向かうようそそのかされ、実際にナチスに否定的なことを言う親は子どもに拒絶された。…このように大量の子どもたちの洗脳が行われたのは、本当に恐ろしいことだよ。」

 

ジョジョの母親のロージーはシングルマザー。父親は軍隊からの逃亡者と言われているようだが、実際に何があったのかは分からない。ユダヤ人少女をかくまっているのはこのロージーで、反ナチの活動もしているようだ。ただ、ジョジョに迷惑が及ぶことを恐れてか、ジョジョに自分の主張を声高に押し付けることもしない。だからジョジョは何も気づいていない。

 

ある日、ロージージョジョが町の広場に差し掛かると、絞首刑にあった人たちが何人もぶら下がっているのが見えた。ジョジョは母親に尋ねる。

 

「あの人たちは何をしたの?」

 

ロージーは答える。

 

「自分ができることをしたのよ」

 

f:id:mikanpro:20200216182801j:plain

 

ジョジョの目線ですべて描いているせいか、全編がファンタジックな印象だが、押し寄せる現実はとても厳しい。ロージーも果たして無事で済むのか…。

 

主義主張でなく、ひとりの人間としてのユダヤ人と出会い、生身の個人に寄り添うことで、自分で物を考え始めるという設定が秀逸だと思う。

 

終盤、ジョジョは再び自室の鏡の前に立つ。そして自分自身に向かって言うのだ。

 

ジョジョ、10歳半。今日からお前は、自分ができることをする」

             

                    f:id:mikanpro:20200216182828j:plain

 監督・脚本:タイカ・ワイティティ
主演:ローマン・グリフィン・デイビススカーレット・ヨハンソン
アメリカ  2019 / 109分

公式サイト

http://www.foxmovies-jp.com/jojorabbit/