映画のあとにも人生はつづく

最近見て心に残った映画について書いています

そばかす

4人で盛り上がっているように見える合コンだが、女性のひとりはつまらなさそう。男性が気を使って話を振ってもなかなか入り込めない。その女性は蘇畑佳純(そばたかすみ・三浦透子)。映画が好きだというので、男は二人で見に行こうと誘うが、佳純は戸惑うような困ったような笑みを浮かべるだけ。帰りに一人でラーメン屋によって、うまそうに啜る。そんな人だ。

 

見ていくとだんだんと分かってくるが、佳純は恋愛や性的なことに全く興味がわかない質だ。そんな人がいるなんて周りは思わないから、佳純は何かと苦労する。特に母親は結婚させようとやっきになっている。

 

あるとき騙されて見合いの席に着くことになった佳純だが、相手がまだ恋愛するつもりはないと知って、逆に意気投合。泊りがけのバイク旅行をするほどの友人となる。しかし、相手のほうがだんだんと、佳純に対して異性としての興味を持ち始めてしまう。とまどう佳純はうまく自分のことを説明できず、結局は怒らせてしまう…。

 

 

監督は、玉田真也。企画・原作・脚本は、アサダアツシ。この作品の着想について問われ、アサダアツシはこう答えている。

 

「映画『his』を作る過程で、いろんなセクシャルマイノリティの方のお話を聞く機会があり、アロマンティック・アセクシャルの方と知り合ったのがきっかけです。人は誰かを好きになるものだと刷り込まれていた僕にとって、恋愛感情を持たない人が存在することは結構衝撃的でした。…恋愛感情を抱かない人にはこの世界がどんな風に見えているのだろうという興味がわいたんです。」

 

そういう人がいるだろうとは思うが、アロマンティック・アセクシャルという風に名前がついてカテゴライズされるほど多くいることに驚いた。(私が知らなかっただけで、例えばこういうドラマもあったようです。恋せぬふたり - NHK

 

物語は、中学時代の同級生、世永真帆(前田敦子)が佳純の前に現れることで動き始める。東京でAV女優として活躍し地元に戻ってきていた真帆は、女性に対する世間の価値観に違和感を抱いていた。

 

 

ある時、佳純が務める保育園で、デジタル紙芝居を作ることになり、佳純は「シンデレラ」の物語を脚本する。しかし真帆は、シンデレラがいかにおかしな価値観(王子様に見初められることが女性の最大の幸福)に縛られているかを力説する。佳純はまったく同じ考えだと語り、自分たちの「シンデレラ」を作ろうと真帆と一緒に新たな物語を書き始める…。

 

三浦透子前田敦子の存在感に圧倒される。紆余曲折の物語をもう少しシンプルにしても良かったように思うが、語りたいことが多くあるのだろう。特に終盤に登場する保育園の新人、天藤光(北村匠海)の言葉が印象に残った。

 

「同じように考えてる人がいて、どこかで生きてるんだったらそれでいいやって思いました」

 

監督:玉田真也
企画・原作・脚本:アサダアツシ

主演:三浦透子前田敦子伊藤万理華、坂井真紀
日本  2022/ 104分