2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧
暗闇に雨の音がする。雨の音に交じってブラームスのバイオリンが聴こえる。隣家の男が弾いているのだ。戦争末期の東京、杉並。里子は父親を病気で亡くし、母親と二人で暮らしている。静かな映画だ。民家は焼かれ、子どもたちは疎開、静けさの中で日常が繰り…
もし君がどこかに去っても 人生はつづくかもね。でもそれでは、 この世界が僕に示せるものなど何ひとつない。 そんな人生に、なんの値打ちがあるだろう。 (「神さましか知らない」村上春樹訳) 今では伝説となったと言われるザ・ビーチ・ボーイズのアルバム…
「到るところに屍体があった。生々しい血と臓腑が、雨あがりの陽光を受けて光った。ちぎれた腕や足が、人形の部分のように、草の中にころがっていた。生きて動くものは蠅だけであった。」(大岡昇平「野火」) たとえば渋谷の雑踏ですれ違う無数の人々に、ひ…