2016-01-01から1年間の記事一覧
ブーケを買おうとしている老人。二束買うと割引なのだが、一束しか必要が無い。店員に一束なら割引額の半額にすべきだと言い募っている。あきれ顔の店員。次に訪れるのは墓地。墓石のそばにたたずむ老人の手にはブーケが二束。結局店員の言うことを聞いたん…
韓国、釜山。高卒だが苦学し裁判官になったソン・ウソクは、弁護士に転じて不動産登記の仕事に乗り出す。1978年、折からの不動産ブームで仕事は順調に拡大、やがて税金問題を専門とする弁護士に転じ、釜山一金を稼ぐと言われる弁護士になってゆく。 金儲けが…
満開の桜の公園の片隅にゴミに交じって一人の男が倒れている。棋士、村山聖25歳。この時七段。誰かに抱えてもらわないと対局場にも行けぬほどに体が弱ってしまっている。座っているのもやっと。しかし将棋を指すという情熱が彼の体を支えている。 村山聖(さ…
湾生とは、戦前台湾で生まれた日本人のことを言うらしい。日清戦争で台湾を得た日本はその後50年にわたってこの島を支配した。その間多くの日本人が海を渡り、多くの日本人がかの地で生まれた。しかし、敗戦後彼らの多くは本土に送還された。その数20万とい…
とても漫画チックな?絵柄にも関わらず、ひとりの女性の半生を確かに見た、そんなどっしりとした印象がある。 昭和19年、広島市内から呉に嫁いできたすず、18歳。段々畑の中腹にあるその家からは、呉の軍港が見下ろせる。夫は海軍の書記官。やさしい義理の両…
目覚めると横に妻の姿を探す老人。その妻は1週間前に亡くなっているが、眠るたびにその事実を忘れてしまう。90歳のゼヴ・グットマン。認知症である。妻の葬儀を終えた彼は、同じ老人ホームに暮らす友人から一通の手紙を受け取る。そこには驚くべきことが書か…
妻に髪を切られながら毒づく中年男が映し出される。小説家の津村啓。彼は、妻が客の前で本名の「さちおくん」と呼ぶのが気に入らない。「面子が立たない」という。彼の本名は、衣笠幸夫。広島カープ往年の名選手衣笠祥雄と同姓同名だ。それが長く彼の人生に…
止め忘れたオルガンのメトロノームが感情をざらつかせる。時の流れは味方にならない、と映画は最初に告げている。 山形のとある町で零細な工場を営む鈴岡のもとに、古い友人が訪ねてくる。刑務所から出てきたばかりの八坂だ。二人は何か因縁があるらしくその…
暴風雨に会い、浜に打ち上げられた男。気づくとそこは無人島だった。男は竹を刈って筏を作り、島を出ようと試みる。しかし、何者かが邪魔をして何度も島に逆戻りしてしまう。ある時、その犯人が大きなウミガメだと気づいた男は、怒って浜に上がったウミガメ…
八王子の住宅街。ある一軒家に夫婦の惨殺死体が見つかる。壁には犯人が血で書いたと思われる「怒」の文字が…。1年後、犯人は整形を繰り返しながら逃亡を続け、日本の各地で、犯人の特徴を持つ男たちが現れる。 千葉の漁師町に住み着いた素性の知れない男。東…
フランスのとある郊外。今にも崩れそうな団地の一室に住民が集まっている。老朽化したエレベーターを補修すべきかどうか、話し合っているのだ。ほぼ全員が賛成したが一人だけ反対した住民がいる。2階に住む中年男のスタンコヴィッチだ。今までエレベーターを…
ひとりの中年男が文句を言い募っている。どうやら職業紹介所のようだ。結局は経験者しか採用されないのに、ここで専門技術の研修を受けたことで数か月も無断にした、と繰り返し述べている。男の名はティエリー・トグルドー。もう1年半も失業状態が続いている…
不思議な映画である。何が不思議かと言えば、人の数だけあるような人生の喜怒哀楽が、この映画はすべて「無」だと語っているのだ。つまり、人生は空に現れた小さな黒いシミのようなものにすぎない、と。 午後5時。映画監督の宿泊するホテルの一室に招かれた…
フランスの青少年裁判所。6歳の子どもと、生まれたばかりの赤ちゃんを連れた母親が、判事に責められている。学校に行かせていないというのが理由のようだ。逆上した母親は、「子どもなんてウンザリ マロニーも荷物もいらない!」と荷物を叩きつけて出て行っ…
暗闇の中、綾瀬はるかの朗読が静かに始まる。背後に古びた金属のような壁がある。その壁には中学生になったばかりの子どもたちの姿がぼんやりと映し出される。広島二中一年生たちである。昭和20年8月6日、生徒たちは建物解体作業のため朝早く本川の土手に集…
ロサンゼルスの郊外、農場の中の大きな邸宅。風呂場で湯に浸かりながら書き物をしている男がいる。ダルトン・トランボ、映画の脚本家である。ハリウッドでは名の知られたトランボだったが、労働運動に参加しているということから、いわゆる“赤狩り”の対象と…
アイルランドの田舎町。古い建物が並ぶ町並みの中に一軒の食材店がある。ケリーおばさんの店だ。ケリーおばさんは口うるさく、あからさまに上客だけを贔屓する意地悪な人。この店で売り子として働くエイリシュは、近く町を出ていこうと考えている。行く先は…
不機嫌な顔をした若い女性が大写しになる。画面に見えないところから若い男が話しかける。「居ないだろうワニなんて」。女性はワニがいないか運河を見下ろしているらしい。行きたいところないの?と男が聞く。女がイライラして答える。 「ここじゃない世界」…
「あの時と同じ… 最初はみな笑っていたわ」 あのヒトラーが2014年のドイツにタイムスリップした。ちょび髭で軍服姿、おかしな言動は物まね芸人と間違われ、すぐにテレビ出演することに。人の心を鷲づかみにする話術はお手の物のヒトラーは、一躍人気者になっ…
「あなたの怒りではなく、あなたのかなしみを撮りたい。」 監督の森達也氏は映画のはじめにこう告げる。相手は佐村河内守氏だ。全聾の作曲家を自称していたが、実は別の人間に作曲させていたことで大きな騒動を巻き起こした佐村河内守氏。世間からバッシング…
車のフロントガラス越しに一軒家が見える。しばらくすると女性が出てくる。車に乗り込んで出発した後を追いかける。カメラが運転手の横顔にパンする。やがて正面に向き直ったとき相手の車のすぐ後ろまで来ている。そこで暗転。次に映し出されるのは扉の向こ…
駅の階段を降りた先にある立ち食いそば屋。良太は春菊天そばを注文する。美味そうである。西武線清瀬駅。旭が丘団地まではここからバスに乗る。年老いた母親が一人で暮らしているのだ。この日は亡くなった父親の遺品に金目の物を探しに来た。「確か掛け軸が…
1961年、ナチスの将校でユダヤ人虐殺を推進した責任者、アドルフ・アイヒマンの身柄が拘束された。15年に及ぶ逃亡生活の果てのことだった。身柄はイスラエルに送られ、エルサレムの法廷で裁かれるという。TVプロデューサーのミルトン・フルックマンは、この…
ペットショップボーイズの「GO・WEST」にあわせて若者たちが踊る。中国山西省の田舎町、汾陽。その中に25歳の美しいタオがいる。1999年、この時タオには、思いを寄せられている二人の幼なじみがいる。一人は内気な炭鉱労働者、一人は自信たっぷりの実業家だ…
アメリカ、ボストン。地元の名門新聞「ボストン・グローブ」に新しい編集局長がやってくる。それが物語の始まりである。彼は着任早々、神父が児童に性的虐待を加えていた事件を調べるように命ずる。30年の間に80人もの児童に手を出したケーガン神父の事件だ…
朝起きると身の回りの様々なものにあいさつする。ランプさん、おはよう。椅子さん、おはよう、と。一日の始まり。母と子がストレッチ。これも毎日の日課のようだ。「部屋」には窓がなく、外の明かりは天窓だけ。今日はジャックの5歳の誕生日。母と子はこの…
雑踏の中、一人の女性が男性を待っている。初めて会う相手のようだ。スマホでお互いの位置を確認しあう。ようやく会えると男性がカフェに誘う。女性がついてゆく。黒木華である。 黒木華を見るために映画館に行った。渋谷のユーロスペースは休日のせいか、満…
北欧の湿地帯。風に揺れる草原が映し出される。霧が湿気を帯びた風景に暗い重しを与える。主人公のアイナー・ヴェイナーは、故郷デンマークのヴァイレの風景を描き続ける画家だ。妻のゲルダも画家。とても仲の良い二人だが子供はいない。ある日ゲルダが、バ…
世界金融危機を引き起こした2008年のリーマンショック。実はその裏で、危機を見越して大もうけをした人たちがいた・・・。映画は4人の人たちにスポットをあてそれぞれの人生模様を描いてゆく。当時の実写をスタイリッシュに織り込み、ユニークな演出で難しい金…
岡山県瀬戸内市牛窓。牡蠣の名産地である。港の近くの作業場では、牡蠣の殻を剥くために何人もの人を雇っている。毎日毎日、いったいいくつの牡蠣を剥いているのだろう。気が遠くなるようだ。しかし、町は過疎で後継者もおらず人手が足りない。中国からの出…