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映画のあとにも人生はつづく

最近見て心に残った映画について書いています

ルーム

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朝起きると身の回りの様々なものにあいさつする。ランプさん、おはよう。椅子さん、おはよう、と。一日の始まり。母と子がストレッチ。これも毎日の日課のようだ。「部屋」には窓がなく、外の明かりは天窓だけ。今日はジャックの5歳の誕生日。母と子はこの部屋から出ることなくケーキを作って過ごす。しかしこの日1日だけではない。7年間、一度も外に出たことがないのだ。

 

母親は17歳の時、だまされて連れてこられ監禁された。ジャックはこの部屋の中しか世界を知らない。なぜか時折大人の男がやってきて、その間だけ洋服ダンスの中で眠る。ジャックを演じるジェイコブ・トレンブレイがとてもかわいい。子どもは子どもでこの世界の中で精いっぱい成長を続けているのが分かる。5歳の誕生日を機に、母親は子どもに本当のことを話す。そして脱出を試みるのだが…。

                                                             

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監督はレニー・アブラハムソン。脚本が原作小説を書いたエマ・ドナヒューである。レニーがエマに書いた手紙にはこう書かれていたという。

 

「部屋はジャックにとってはすべてであり、ママにとっては牢獄だ。そこはとても豊かな、物語にあふれ、同じ日々が繰り返される場所。」

 

子どもは実に素直である。与えられた世界をとりあえず生きるしかないからだ。その与えられた世界を豊かにする天才でもある。でももし、今までの世界は嘘で、この壁の向こうに本当の世界があると言われたら、どうだろうか。さらにその世界に飛び込めと言われたら?私たち大人では無理かもしれない。ジャックは最初拒否するが、母親を信じ、そのとてつもない「跳躍」をやってのける。

 

初めて見る広い青空、初めての街路樹、初めての風。未知への驚きと不安と喜びがないまぜになったジャックの表情は、一度見ると忘れられない。生きるとはこのような表情を見せることをいうのだ、と思う。この時ジャックは本当の意味で生き始める。

 

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しかし逆に母親は、元の世界に戻ったことで、自分の欠落と向き合わなければならなくなる。あり得たかもしれない人生の可能性、なぜ友人ではなく自分だったのか。極めつけはマスコミの質問だ。子どもに父親のことを話すのか?子どもが生まれた時、なぜ犯人に子どもだけは外の世界においてきてくれと頼まなかったのか?

…直後に彼女の中の何かが切れてしまう。

 

「人々がたとえ非常に暗いことを経験している最中であっても、人生に価値や希望や救済を見出す力を持っていることを描いている。それにこれはラブストーリーだ。母親と子供の愛の物語。人々は宣伝文句を見て『なんだか暗そうだな』と言うかもしれないが、そうじゃない。常に、最初から、光に向かう旅路だ。」

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ふたりはどこへ向かうのか。ジャックは母親を助けるためにある決意をする…。運命は母親に地獄を味わわせたが、同じ運命がジャックを母親のもとに連れて来た。その未来を信じるに足るやさしく勇敢な子供を。

 

監督:レニー・アブラハムソン

脚本:エマ・ドナヒュー

主演:ブリー・ラーソン、ジェイコブ・トレンブレイ

原題「ROOM」

原作:エマ・ドナヒュー「部屋」上下巻(講談社文庫)

アイルランド・カナダ映画 2015 / 118

 

公式サイト

http://gaga.ne.jp/room/