映画のあとにも人生はつづく

最近見て心に残った映画について書いています

わたしたち

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ドッチボールのチームを分けるためにじゃんけんをする。勝った方が味方を選ぶ。カメラはある一人の女の子の表情をとらえ続ける。いつ自分の名前が呼ばれるか、不安な面持ちだ。呼ばれないと参加もできない。じゃんけんの声と他の子の名前が次々に聞こえる。女の子はようやく最後に呼ばれた。しかし始まってすぐ、ラインを踏んだから「アウト」と言われる。しかも「アウト」と言ったのは味方の子どもだ。踏んでいないのに…。

 

「あの子、味方に言われてるよ…」

 

女の子の名前はスン。小学校の4年生。教室で友達はいない。幼馴染のボラがいるが、逆にその子から仲間外れのいじめを受けている。しかし夏休みに入ると、偶然転校してきた女の子と知り合い、とても仲良しになる。お金持ちだが両親が離婚して祖母と暮らすジアだ。もつれあうようにしてじゃれあい時間を過ごす二人。スンにとって幸福な時間。しかしある時、スンとジアの仲のいいことが、いじめっ子のボラに分かってしまい…。

 

監督・脚本は新鋭のユン・ガウン。この映画は「オアシス」のイ・チャンドンの企画で、脚本も共に練りあったという。

 

「実は大人の世界と子どもの世界はそれほど変わらないのではないかと思っています。大人の目には、子どもたちがとても小さな世界で、とても些細な出来事に向き合っているように見えるかもしれません。でも現実は、大人の世界が(実際よりも)大きく見えているだけではないでしょうか。」

 

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夏休みが終わり、再び教室の人間関係力学にもどると、ソンはまた居場所を無くす。ジアもボラのグループにからめとられてソンに冷たくあたるようになる。やがて感情のすれ違いが行き過ぎ、お互い触れてほしくない秘密をそれぞれが級友にばらしてしまう。どちらもプライドが傷つき、心が血を流す。大喧嘩する。

 

プライドというものはどうしてこう厄介なものなのか。小さな子どもも大人も同じ。そして国同士でも同じ。しかしプライドが無ければ生きてゆけない。どうすればいいのか。余計なのは、勝ち負け、他者との優劣に関わるプライドだ。それは比較することでしか生まれない。しかし生きてゆくために必要なのは、プライドというより「誇り」。誇りは自らの内にあり他と関係がない。それを静かに守り育てることができるか。

 

ソンとジアの二人は喧嘩しながら近づき、離れ、また近づきを繰り返す。微妙な距離を保ちながら。小さな二つの相撲独楽の様に。

 

「子どもたちは些細なきっかけで友だちとの関係がこじれたり距離が開いたりしても、相手を信じたり、守ってあげたいと思ったりします。何度失敗しても、好きな相手と友だちになりたいと願います。大人になるにつれて、そういう感情はなくなっていくような気がします。…(子どもたちは)きっと、いい意味で単純なんです。自分の心を大切にしていて、自分の心を守りたいから、相手を信じ続ける。…そのような単純な気持ちで生きていれば、人間関係を結びやすくなるのではないかと思っています。」

 

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ソンには幼い弟がいる。ユンだ。友達のヨノといつも遊んでいるが、いつもどこかを引っかかれたり叩かれたりしている。この日も目の周りが真っ赤だ。見かねたソンが尋ねる。

 

―どうしてヨノと遊ぶの?

―僕が叩いてね、そしたらヨノがここをバシーンと・・

―それでどうしたの?

―一緒に遊んだの

―やられたらやり返さないとダメよ

―でもそしたら、いつ遊ぶの?

―・・・

―ヨノが叩いて僕がまた叩いたら、いつ遊ぶの?

 

ジアと喧嘩をしているソンが、不思議な顔をして弟を見つめる。ソンはあることを決意する…。

 

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ソンは時々、弱い自分を押さえつけ振り絞るように自分の思うこと(本当の気持ち)を口にする。言い淀むが、思い切って言う。その表情と唇の動きがいじらしく、小さな勇気という言葉を思い出す。それは大人になって忘れてしまう種類の勇気なのかもしれない。しかし、とこの監督は言う。

 

「わたしたちは多様で複雑な理由で愛する人を傷つけ、愛する人に傷つけられる。それでもわたしたちは本当の気持ちを伝えることを諦めてはならない。」

 

監督・脚本:ユン・ガウン
企画:イ・チャンドン

主演:チェ・スイン、ソル・ヘイン
韓国映画 2016/ 94分
 
公式サイト 

http://www.watashitachi-movie.com/